弓の四季

和弓にとって、春、秋は持てる性能を能力通り、安定して発揮できる一番の良い季節です。一方、夏は性能を発揮するにも困難で、災禍なく無難に使用することさえ大変過酷な季節と言えます。高温が弓力や性能に大きな影響を与えることは避けられないからです。 冬は弓の形的には安定している季節で、晩秋から気温低下とともに徐々に弓力が増し弦子も最高に冴える季節です。しかし寒くなるにつれて素材が堅くなり笄の起きやすい季節でもありますから対策も必要になります。矢を重めのものに替え、そして行射前には、冷えきった弓に柔らかい布での摩擦熱を加えるなどの気遣いも大切なことです。
四季の気温の変化による弓力の増減は、和弓の避け得ない宿命と考えるべきです。
日々の射技にも影響があることを考える時、夏場用の弓、冬場用の弓、春秋用と区別して用意することは、安定的な射技を続けるためには是非必要なことです。また笄を防ぐ意味で、冬場に限っての二寸伸、四寸伸等の長めの弓使用も検討していいと思います。
端的に申せば年間を同じ弓で通すことには大きな無理があります。射技に好不調の波があるのは当然ながら、季節の温度差による弓力の変化が少なからぬ影響を与えていることを認識して対応する必要もあります。
気温が10度違うと1キロ近い弓力差が出ると考えていいですから、午前中18キロ、午後は17キロということも当然起こりえることであります。冬と夏を考えますと条件によっては3キロくらいの増減の可能性もあります。高温時での数多い行射は予想以上の弓力減退の原因になります。たとえば冬から18キロの弓を使い続けた場合。夏終盤には15キロになっても、当然起こりえることとご理解下さい。

ファイバー弓の場合はこの限りではありません。

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