合成弦との上手な付き合い方
Q6.弓の故障を起こさずに、合成弦を使用する方法を教えてください。
合成弦の一番の長所は切れないことであります。この長所は一方で、弓に負担をかけ、故障・破損を招く原因にもなります。合成弦の特性を理解し、弓に負担をかけないための対策や工夫をこらしてお使いになることが大切です。
合成弦には離れの衝撃を吸収する能力はありませんので、麻弦使用の場合よりも重めの矢を使い、絶対に筈こぼれをしない細工をすることが何よりも大切な事です。以下、具体的な留意点・対策を記します。
中関・矢筈に加工する
【写真17】
筈こぼれの状態(空筈)で離れると、必ず弓の反転を起こします。合成弦を使う際には、空筈を起こさないための対策が必要です。具体的には、中関をきつめに作り、矢筈にも丸ヤスリで奥に膨らみを持たせるような細工をします(写真17)。また空筈の一つの原因となる筈割れを防ぐため、中関を作る際はクスネやアラビックヤマト等の固まってもソフトな接着剤を使います。
同じ弦を切れるまで使用しない
弦輪の部分を巻き足して太くしてあるのは、衝撃をなるべく軽く受け止めるためです(この部分が太すぎると弦子がしないため、巻きは必要最小限にしてあります)。矢数が増えるに従って輪の部分は段々細く、堅くなりクッションの役目をしなくなり、やがて関板の弓ハズ肩の外竹側に縦割れが起き、使い続けると、弦輪が芯、関板に食い込み修理不可能な状態になります。この破損は強い弓ほど顕著です。
もし縦割れが見つかったら、なるべく早い時点で瞬間接着剤を注入し、縦割れの進行を防ぎます。日頃の点検を怠らないようにして下さい。麻弦ならば200~300射引ければ十分納得できる矢数であることや、合成弦の使用で弓が受けるダメージ、麻弦との価格差等を考え、同じ弦を切れるまで使用せず、合成弦であっても200?300射を目途に替えるほうが得策です。
重めの矢、箆張りの強い矢を使う
矢の重量と弓の寿命、弦子、弦の持ち具合には大きな関連があります。矢飛びが悪くならない範囲でなるべく重い矢を使うべきです。
矢の重量を好みで選ぶのは間違いで、弓力に応じた重量と、箆張りの強い適度な太さの箆で作られた矢を選んで下さい。重目で箆張りの強い矢ほど弦の持ちが良く、離れの衝撃を和らげ、先手の感触をソフトにし、笄も起こりにくく良い弦子も出ます。
弓力に対して軽い矢は弓体を強く叩き過ぎるため、左右のブレが大きくなり弦子は出にくいのです。弓力に対してやや重いほうが弦子は出ます。
竹矢の場合、細目より太目の方が通常箆張りが強いものです。細めの箆は重量に比して箆張りが弱い場合が多く、箆張りが弱いと離れの衝撃を押さえる働きも弱くなり矢所も散る傾向があります。